この記事では、縄文時代の世界観と呪術的風習ついてわかりやすく解説します。
・アニミズムとシャーマニズム
・縄文時代の呪術的風習
などについて書いています。
縄文時代の人々が持っていた世界観はどのようなもので、それによってどのような風習が生まれたのでしょうか。
記事の内容は基本的に通説にしたがい、歴史が苦手な人にもわかりやすく、大学入試レベルの受験生にも役立つ内容を心がけています。
受験生が押さえておきたいキーワードやポイントは、黄色マーカーで色をつけていますので参考にしてください!
それではいってみましょう。
アニミズムとシャーマニズム
縄文時代の人々の世界観には、自然を崇拝する考え方が根強くあったと考えられています。
その考え方をアニミズムやシャーマニズムといいます。
それぞれについて見ていきましょう。
アニミズム
縄文時代の人々の世界観をあらわす考え方として、アニミズムがあります。
アニミズムとは簡単に言うと、「あらゆるものに魂が宿っているという考え方」です。
石や大地、水などの自然物から植物や動物、さらには雨や風や雷などの自然現象まで、あらゆるものに魂が存在するという考え方です。
アニミズムは精霊崇拝などといったりもします。
自然の恵みを享受して狩猟採集生活をしていた縄文人のベースとして、アニミズムがありました。
アニミズムは世界各地の原始宗教として存在しますが、とくに日本人には根強くその考え方が残っているといわれています。
縄文時代のアニミズムは、現代までの日本人の宗教観や世界観のベースになっているのですね。
歴史的にみて日本では一神教的な宗教は主流になりませんでした。
一方で、アニミズム的な世界観をもとに、八百万の神々が存在するという「神道」が誕生します。
太陽の神様もいれば、お米の一粒一粒にも神様がいるというのが神道の考え方ですよね。
アニミズム的な世界観は、外からくるものに対して寛容であるという特徴もあります。
日本史においては、江戸時代の鎖国期間など一部の時代を除いては、外から来たものを取り入れて独自にアレンジしていくというのが日本文化の大きな特徴としてあります。
海外から伝わった仏教をうまく取り入れ神道の神々と合体させた「神仏習合」や、明治時代の「和魂洋才」などはその最たる例です。
現代の日本人も、クリスマスを祝って、お寺で除夜の鐘をついて、神社に初詣に行くというようなことをなんの違和感もなく行っていますよね。
こうした日本人の宗教的な寛容性のベースに縄文時代のアニミズムがあると考えると、なんだか面白いですよね。
[jin-yohaku10]
アニミズム的な要素は、スタジオジブリの宮崎駿監督作品にもよく現れています。
とくに「となりのトトロ」や「もののけ姫」には、アニミズム的世界観が顕著に現れていて、森の精霊や神々が登場しますよね。
※ちなみに「もののけ姫」の時代設定は室町時代ですが、主人公のアシタカの出身地の村は縄文文化を根強く残した村として描かれています。
よく見ると、黒曜石でできた打製石器のナイフを使ってますし、アシタカの弓矢の矢じりは黒曜石の石鏃です。
あとで学びますが、弥生時代以降も北海道や東北地方の一部では縄文文化が続き(歴史用語では「続縄文文化」といいます)、独自の文化を育んでいきます。
アシタカの村は、室町時代になってもなお縄文文化を残した隠れ里的な存在だったのかもしれません。
シャーマニズム
シャーマニズムの思想も、アニミズムとセットで存在することの多い考え方です。
アニミズムは、あらゆるものに魂(神)が存在するという考え方ですが、シャーマニズムはそうした神々の意思を受け取るための媒介者の存在を必要とする考え方です。
その媒介者のことをシャーマンといいます。(巫女や祈祷師ともいいます)
日本の歴史における有名なシャーマンとしては、弥生時代の後期に邪馬台国の女王として存在した卑弥呼がいます。
卑弥呼はシャーマン的な素質をもった宗教的権威者であったと考えられています。
縄文時代にもシャーマンは存在したと考えられており、また呪術などに使われたと考えられる道具の存在や風習もわかっています。
縄文時代の呪術的道具や風習の代表的なものとしては、土偶、石棒、抜歯、研歯、屈葬、環状列石などがあります。
次の章では、それらについて解説します。
縄文時代の呪術的風習
縄文時代の人々はアニミズム的な世界観のなかで生きていました。
そのなかで、呪術的な風習なども誕生したと考えられています。
代表的なものについて見ていきましょう。
土偶
土偶(どぐう)は縄文時代の呪術道具として有名ですよね。
土偶は女性(妊婦)をかたどっているといわれています。
妊婦をあらわしていることから、安産や子孫繁栄を願ってつくられたと考えられています。
発見される土偶は、体の一部が意図的に壊されているものが多く見つかっています。
そのことから、土偶は出産によるリスクを避けるための身代わりとして使われていた呪術道具ではないかというのが通説になっています。
ちなみに縄文時代の人が着ていた服装や身につけていたアクセサリーは、土偶の柄を参考にして、こういうものだったんじゃないかと推測されています。
柄があって、けっこうオシャレですよね。
関係ないですが、ドラえもんの映画「のび太の日本誕生」には敵として土偶型の怪物がでてきます。
子供心に怖かったなあ。
石棒
石棒(せきぼう)は男性の生殖器をあらわして作った磨製石器の呪術道具です。
石棒も土偶と同じく、子孫繁栄を願ってつくられたものでしょう。
上記の写真は普通の石の棒にも見えますが、けっこうリアルな形をしたものも多く発見されています。
興味のある人はこちらから確認してくださいね。(Google画像検索のページです)
抜歯と研歯
縄文時代の特徴的な風習として、抜歯(ばっし)と研歯(けんし)があります。
抜歯は、歯を左右対称など特徴的な形に抜く風習です。
縄文時代の人骨の多くに抜歯されたあとがあることから、成人の通過儀礼などとして抜歯がなされていたのではないかと考えられています。
一方、研歯は前歯をフォークのような形に削ったものです。
研歯を施されている人骨は少ないことから、シャーマンなど特殊な職能の人の証として研歯がなされていたのではないかと考えられています。
屈葬
縄文時代の埋葬は、遺体を共同墓地に土葬する形で行われていました。
縄文時代の人骨は、膝を抱えたような独特の姿勢で発見されます。
縄文人は埋葬する際、遺体を体育座りのような膝を抱えた姿勢に強く折り曲げて土の中に埋葬していたと考えられます。
この埋葬方法を屈葬(くっそう)といいます。
なぜこのような姿勢で埋葬したのかについては、
・生まれ変わりを願って胎児の姿に戻して埋葬した。
・死者の霊魂が悪さをしないように動きを封じて埋葬した。
という大きく分けて2つの説があります。
真相はわかりませんが、どういう意図で縄文人が屈葬をしていたのか考えるとワクワクしますね。
環状列石
縄文時代の共同墓地には、円形に石が並べられているものも見つかっています。
これを環状列石(かんじょうれっせき)といいます。
秋田県の大湯環状列石などが有名です。
環状列石がなんのために作られたのか、はっきりしたことはわかっていません。
ですが、夏至の太陽の運行にあわせて作られているものがあることなどから、天体の動きと連動したなんらかの呪術に使われていたのでしょう。
縄文人は丸木舟を使って外洋航海をしていた可能性もあることがわかっています。
航海をするには天文の知識が必要となります。
環状列石の存在からも、縄文人の天文知識はかなりのものであったことがわかります。
まとめとポイント
以上、縄文時代の世界観と呪術的風習について解説しました。
縄文時代の世界観は、日本人の思想の原点ともいえますので、しっかりと知っておきたいですね。
この記事が参考になれば嬉しいです!
受験生が抑えておきたいポイント
さて、今回解説した箇所で大学入試を目指す受験生がとくに覚えておきたいポイントをいくつかピックアップします。
このあたりの内容は覚えることも少ないので、丸暗記がおすすめです。
「あらゆるものに魂が宿っているという考え方」でしたね。
土偶や石棒の特徴とそれぞれのもつ意味合いを理解しておきましょう。
抜歯、研歯、屈葬は、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
とくに屈葬は、弥生時代の埋葬方法(伸展葬)との違いが大事です。
こちらの記事もお読みください
[jin-tensen color=”#f7f7f7″ size=”3px”]
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が参考になったら、コメントやシェアをしていただけると嬉しいです。
この記事に関する質問もコメント欄で受け付けています。
お気軽にコメントしてください。
コメントは「参考になった」などの一言でもすごく嬉しいです。
また、間違いなどを見つけた場合もコメント欄でご連絡いただけるとありがたいです。
このサイトでは、「日本史を学んでいる高校生が、読むだけで日本史の要点がわかり、大学受験レベルの知識を身につけることができる」ことを目標に記事を執筆しています。
また別の記事でお会いしましょう!
コメント